アイルランドの或るクリスマス風景

アイルランドの或るクリスマス風景



アイルランドのクリスマスは家族のためにあります。そんなクリスマスにもやはり"移民"というキーワードが出てくるようです。


いくらセイント・パトリックス・デーがアイルランドの大きなイベントと言ってもクリスマスには敵いません。クリスマスの独特な雰囲気は、そこにいるだけでそわそわしてきます。アイルランドのクリスマス気分は12月に入ると、いよいよ盛り上がります。経済発展著しい近年は、巨大なクリスマスツリーも街じゅうに飾られます。でも、ちゃんとキリストの誕生を模した Crib [クリブ] もあり、クリスマスの意味は忘れません。

町はクリスマスの飾りできらびやかになり、ショッピングセンターにはサンタの家ができ、子供達がサンタとお話をするために列を作ります。街中ではキャロルを歌う若者や年配の人たちなどを目にするようになります。クリスマスは家族の間でお互いに家族にプレゼントをあげるので、皆何を買おうかと頭を悩ませます。クリスマス・ショッピングの時期到来です。

 

でも、何といってもアイルランドのクリスマスを特別なものにするのは、遠くの国から帰って来る家族や友人達でしょう。古くから移民"輸出国"だったアイルランドの人々は、アメリカやイギリス、オーストラリアなど各地に多くの親戚が散らばっています。この時期はそういった家族が帰ってきて、アイルランドのクリスマスをいっそう特別なものにします。この時期、空港の忙しさはピークに達します。空港の出口近くには "Welcome Home" と大きなネオンサインが光っています。特に12月23日は空港が一年で最も忙しくなる日です。テレビのニュースでは空港で再開する家族の様子が伝えられ、アイルランドのクリスマス風景を映し出します。

アイルランドのラジオやパブでは、アイリッシュのバンド、ザ・ポーグス( The Pogues ) の名曲 「ニューヨークの夢 ( Fairytale Of New York ) 」 がくり返しかかり、「またこのシーズンが来たか」 と実感させます。この曲はニューヨークで、夢破れ、口げんかをしながら昔を回想しているカップルの様子を、クリスマスを舞台に歌ったものです。まさに、多くが夢を求めて移民していったアイリッシュの様子と重なります。


家庭ではどうでしょう。リビングルームの中心や暖炉のマントルピースの上には、親戚や友人から送られてきたクリスマスカードが並べられ、片隅にはクリスマスツリーが飾られます。ツリーの上には星か天使が飾られます。これらが人々を導いてくれるという意味です。アイルランドでは子供達は、欲しいものをリストにして、サンタクロースに手紙を送ります。封筒の宛名には、「 Santa Claus. The North Pole. ( 北極 サンタクロース ) 」
とだけ書いて出します。これで郵便局はちゃんと受け取ってくれます。

24日はたいがい仕事があるので、早めに 5 時ごろ帰宅して、食事は出前などで簡単に済ませ、祭日の準備をします。そしてこの日は祖父母などの親戚とプレゼントを交換します。

そしていよいよクリスマスです。この日には家族とプレゼントを交換し、そしてそれらを開けます。小さな子供達には待ちに待ったときです。ここには "サンタ " からのプレゼントもあります。両親からのプレゼントはなぜか小さめですが、理由はおわかりだと思います。

そして、ちゃんとミサ (Mass) にも行きます。ミサを終えたあとは家族でクリスマスディナーの準備です。このときに近所の家族が挨拶に来たりします。午後 3 時か 4 時ごろになるとディナーが始まります。前菜から七面鳥 (turkey) のメインコース、デザートまで時間をかけて大いに楽しみ、動けなくなるくらいまでお腹いっぱい食べます。ちなみに、たいがいクリスマスディナーは一日では食べきれないので、この日から1週間はターキー&ハムの食事が続きます。クリスマスは皿洗いを次の日 (St. Stephen's Day - 聖スティーブンの日) に後回しにして、ソファーに沈んでTVで映画を見るのが、よくある風景でしょう。この日は、映画がクラシックから最近のヒット作までTVで次から次へと続きます。定番は「 素晴らしき哉、人生! (It's A Wonderful Life), 1946年 」や「 Willy Wonka & the Chocolate Factory , 1971年 」といったところ。その他クリスマス特番などを見たり、またボードゲームをしたりして、家族とゆったりとした時を過ごします。

日本では、クリスマスの装飾は 25日の店の営業時間が終わる頃には外されてしまいますが、アイルランドでは新年まで、このまま祝祭の雰囲気は続きます。25日が過ぎ、新年になるまでの1週間ほどは、海外からクリスマスのために帰ってきた友達などに会う絶好の時期です。この期間の仕事は会社によってまちまちですが、年末まで数日出勤するぐらいです。パブに繰出し、1年ぶりに再会した友人と、お互いのこの1年の出来事について、話が盛り上がります。夜の街は若者であふれ、パブが閉まる頃にはタクシー乗り場は長蛇の列です。

こうしてアイルランドの年が明けてゆきます。新年になり里帰りしていた子供達や友人は、また、それぞれの生活がある都市や国に帰って行きます。クリスマスの飾りは楽しかった日々を惜しむように1週間ほどそのまま残っています。こうして皆、いつもの生活に戻っていくのでした。

[2005年12月 Taro]

The Pogues: In the wake of the Medusa http://www.pogues.com
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