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2017.04.29article
アメリカ大統領とアイルランド系移民 (前編)
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アメリカ大統領選挙の話題をアイルランドの移民の歴史と共にご紹介です。今回はその前編です。(2008年現在)

アメリカ大統領とアイルランド系移民 (前編)

Mt.Rushmore
アイルランドはかつて多くの移民を北アメリカに送っていました。このサイトを訪れる多くの方がアメリカ大統領のことに関心があるようなので、アイルランドとの関係でアメリカ合衆国の大統領を見てみました。アイルランド系である歴代大統領を挙げると以下のようになります。

第5代 ジェームズ・モンロー (James Monroe)
第7代 アンドリュー・ジャクソン (Andrew Jackson)
第11代 ジェームズ K. ポーク (James Knox Polk)
第15代 ジェームズ・ブキャナン (James Buchanan)
第17代 アンドリュー・ジョンソン (Andrew Johnson)
第18代 ユリシーズ S. グラント (Ulysses Simpson Grant)
第21代 チェスター A. アーサー (Chester Alan Arthur)
第25代 ウィリアム・マッキンリー (William McKinley)
第26代 セオドア・ルーズベルト (Theodore Roosevelt)
第28代 トーマス・ウッドロー・ウィルソン (Thomas Woodrow Wilson)
第33代 ハリー S. トルーマン (Harry S. Truman)
第34代 ドワイト D. アイゼンハウワー (Dwight David Eisenhower)
第35代 ジョン F. ケネディ (John Fitzgerald Kennedy)
第37代 リチャード・ニクソン (Richard Milhous Nixon)
第40代 ロナルド・レーガン (Ronald Wilson Reagan)
第42代 ビル・クリントン (William Jefferson Clinton)
第44代 バラク・オバマ (Barack Hussein Obama II)
(『北アイルランド「ケルト」紀行』 より)

White House緑で囲んだ3人が現在のアイルランド共和国に当たる地域からの移民の子孫です。更にその中で、カトリック教徒はケネディだけになります。その他ほとんどの大統領はスコッチ・アイリッシュ (Scotch-Irish、Scots-Irish) と呼ばれる人々です。

 

 

アルスター入植とスコッチ・アイリッシュ

Ulster12世紀後半に始まるアイルランドへのイングランドの侵攻は、16世紀、ヘンリー8世が王と宣言することにより支配を確立してゆきます。17世紀に入ると植民地化としてイングランドによって、スコットランド人のアイルランド北部への入植が組織されます。これがアルスター入植 (植民) です。この時、入植していった人々は長老派が多くを占めるプロテスタントです。

ここで、キリスト教について大雑把に少し。アルスター入植より以前、16世紀にヨーロッパで起きた宗教改革により、カトリックから分かれて新教、プロテスタントが出来ます。プロテスタントにはいろいろな宗派が生れますが、それらには、例えば、ルター派や、カルバン派 (スコットランド:長老派=プレスビテリアン)、そしてヘンリー8世がイングランドの国教とした英国国教会(Church of England / Anglican Church)などがあります。

Christ Churchさて、イングランドは英国国教会を国教とし、英国国教徒以外のキリスト教徒をイングランド国内で弾圧します。アイルランドではアイルランド国教会 (Church of Ireland)を設立し、イングランド王を教主とすることでアイルランドの支配を確立してゆきます。 イングランドにより、アイルランドに住むプロテスタント系住民は、税制や土地所有の制度が優遇されていました。しかし、18世紀になりイングランドはアルスターの国教会に属さないプロテスタントにも同じように重税を課してゆきます。プロテスタント系の "アイリッシュ" はカトリックのアイリッシュよりも経済的に余裕がありました。そこで、堪りかねたアイルランド国教会 (英国国教会) 以外のプロテスタントたちは、財産を売り払い新たな土地を求めて北アメリカに渡っていきました。これがアメリカでスコッチ・アイリッシュと呼ばれる、プロテスタントのアイルランド系アメリカ人です。

 

アイリッシュ・ディアスポラ

Emigrantアメリカ合衆国、イングランド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに離散した、大規模な移民の動きはこのスコッチ・アイリッシュから始まり、1801年から1921年の間におよそ800万人のアイリッシュがアイルランドを離れてゆきました。

さて、アルスター以外でも、カトリックへの弾圧から逃れるために、移民が北アメリカを目指します。しかし、スコッチ・アイリッシュとは違い、アメリカに渡るだけ経済的余裕の無い土地を取り上げられた、元からアイルランドに住む多くの住人達は、圧政に耐えながらもなんとか生き延びてゆきます。しかし、アイルランド系移民の数が飛躍的に増えるきっかけとなる出来事がヨーロッパで起きます。ジャガイモの病気です。

[ 次回へつづく]

 

[ 2008年8月 Samon ] 2017年4月一部加筆

参考文献:
北アイルランド「ケルト」紀行 / 武部好伸 / 彩流社
アイルランドからアメリカへ 700万アイルランド人移民の物語
   / カービー・ミラー、ポール・ワーグナー、茂木健訳 / 東京創元社
ケルト歴史地図 / ジョン・ヘイウッド、倉嶋雅人訳 / 東京書籍

 

[ INJ Link アメリカ大統領とアイルランド系移民 (後編) ]


The White House : www.whitehouse.gov
The Presidents – the White House : www.whitehouse.gov/1600/Presidents
American President : www.americanpresident.org

アイルランドからアメリカへ―700万アイルランド人移民の物語

INJ Link アメリカの中のアイルランド
INJ Link ケルティック・フェスティバル in シカゴ
INJ Link タイタニック号と20世紀初頭のアイルランド
INJ Link アイルランドの地図とカウンティー

わが命つきるとも北アイルランド「ケルト」紀行―アルスターを歩く 

 


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