ラグビーアイルランド代表と日本代表との対戦や、アイルランドチーム躍進の秘密について海老島さんから貴重なお話をいただきました。
ラグビーアイルランド代表と日本代表との対戦や、アイルランドチーム躍進の秘密について海老島さんから貴重なお話をいただきました。 (2005年)
世界ランキング7位アイルランド来る!
1985年以来のラグビー、アイルランド代表チームの来日である。前回日本代表との試合(秩父宮)では、前半を同点で折り返しアイルランド・チームにとって楽な試合ではなかった。試合は非常に蒸し暑い日に行われ、年間を通して滅多に25度以上気温が上がることのないアイルランド選手にとって、暑さは一番の敵であると思われる。その後、日本とアイルランドはワールドカップで2度対戦し、それぞれ点数的にはダブルスコアに近い点差であったが、内容的には互角の部分もあり、アイルランドでは日本ラグビーの評価が高かった。
そして2000年秋には日本代表チームがアイルランドに遠征した。ベルファストで25歳以下の代表、ダブリンでフル代表と試合をし、当時アイルランドに住んでいた私は両方の試合とも観戦する機会に恵まれた。結果は日本代表の惨敗に終わる結果であった。
ベルファストで行われた25歳以下の代表との試合を見たときに印象に残る出来事があった。日本チームは非常にプロフェッショナルに見えた。コーチ監督が小型マイクを装着し、ピッチの状況を綿密に観察し、選手のウォーミングアップもとても組織だっていた。何か最先端のスポーツ産業によって作り出された「製品」を見ているような気分であった。一方、若手中心のアイルランド選手は、そこらの若者のなんら変わる様子はなく、何人かの選手はパンをかじりながら試合直前にグラウンドに現れ、ウォーミングアップというより、単にボールを使ってふざけあったりしていた。どこかの学生チームを思わせる雰囲気であった。
しかし、試合が始まると立場は一転していた。アイルランドは控えの選手と監督コーチが一丸となってチームを応援し盛り上がっているのに対して、日本チームは監督コーチが無線で連絡を取り合っているものの、控え選手もばらばらで観戦しチームとしてのまとまりがあまり感じられなかった。「ハイテク」と「ローテク」の戦いのように見られた試合前の構図であったが、始まってみると「熱さ」を全面に押し出した「ローテク」アイルランドチームの一方的な展開であった。
アイルランドのスポーツを語るとき、この「熱さ」がキーワードになってくる。私がアイルランドでラグビークラブに入っていたとき(1992年から1993年)に、日本でもお目にかからないような「根性練習」にたくさん遭遇した。ラグビー関係者がとても純朴にラグビーを愛しているのがひしひしと伝わってきた。当時はこの熱さがあってもアイルランドラグビーにとってなかなか勝てないどん底の時代であった。その後プロ化の波に乗ることに成功し、アイルランドのラグビーは見違えるように強くなった。アイルランド経済が上向いたことにもシンクロしていて、お金が入ってくるだけラグビーの競技環境が良くなっている(実際ラグビー協会は企業のサポートにかなり依存している)と主張する向きもあった。
今回のアイルランドチームは手強い。ライオンズの遠征で主力11人が抜けているものの、ここ数年常に6カ国対抗で優勝争いをしている事実からも分かるとおり、選手層は非常に厚い。世代交代の時期に来ているため若手選手のモチベーションも高いと想像できる。日本チームがこの「熱き」アイルランドチームを打ち負かすには、梅雨を迎えようとしている季節の「蒸し暑さ」の力を借りなくてはならないのか? いずれにしろ両チームの持ち味の出たすばらしいゲームを期待する。
[ 2005年6月 びわこ成蹊スポーツ大学 海老島 均 ]
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